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本書は前訳書『トマス・アクィナスの自己認識論』(2021年刊)を踏まえて,13世紀の1275年から1300年までの25年間にわたる自己認識論の展開を,6人の哲学者を中心に様々な論争を紹介しつつ検討した画期的作品である。
著者は当時のパリやオックスフォードを揺るがした論争の背景を的確に把握して,新アウグスティヌス主義としてみられるアクアスパルタのマテウス,ヨハネス・オリヴィ,ロジャー・マーストン,また初期トマス学派の代表者であるサットンのトマス,さらには独立的なアリストテレス主義者だったフォンテーヌのゴドフロワ,最後に中世の新プラトン主義を知る上で欠かせないライン学派からフライベルクのディートリヒら6人を選び検討する。これにより13世紀末の思想動向がほぼ網羅的に扱われる。
本書で扱われている個々の論争の内容には近代哲学に通ずる多くのテーマがすでに展開されており,近代に固有なものと思われていた事柄が数世紀前から人々の関心の対象であったことが分かる。
とくに自己認識論という哲学にとって枢要な観点から,研究の進んでいない中世の思想家たちの歴史的な位置取りを考察し,トマスからスコトゥスに至る思想史的な間隙を埋めることにより,中世と近世との緊密な関連を提供する。
ヨーロッパモデルの習得を目指してきたわが国の学問研究にとって,さらに中世思想を思想史全体の中で捉えることが要請されている今日,本書が示す新たな知識や知見は貴重な示唆に富み,今後の研究者にとって必読文献となろう。
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