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ヘーゲルはいかにして「哲学者ヘーゲル」となったのか。17・18世紀のさまざまな書籍や雑誌や新聞などかつては容易に見られなかった資料へのアクセス環境は,近年のデジタルアーカイブの整備によって激変した。本書は,これら多様な資料を活用することにより彼の同時代人の眼を手に入れ,ヘーゲルの哲学的経験や人間模様,さらに思想的交流を通じて生きたヘーゲル像を描く。
第Ⅰ部「哲学への旅発ち」では,少年ヘーゲルの膨大な「抜き書き」の分析から解釈学の問題を抱ええていたことを見出し,さらに当時大きな潮流であった「心理学」のヘーゲル哲学への影響を検証する。
第Ⅱ部「ヘーゲル哲学の前哨」ではヘーゲル哲学の最初のモチーフ「生」をめぐるヤコービからの影響,シェリングの「生」とを比較検討する。
第Ⅲ部「精神哲学の基底」では,当時多くの分野で「エンツュクロペディー」と名付けられた著作が刊行された中,ヘーゲルの『エンツュクロペディー』は如何なる著作を目指したのかを自然科学などの動向にも目を向けて明らかにする。
第Ⅳ部「精神哲学の源泉」では,ゲーテ『色彩論』を受容しつつ「自然哲学」「精神哲学」「美学講義」などで「色」についての見方を深め,ドレスデンでの美術の鑑賞により「美学講義」の内容が充実したことを分析する。
第Ⅴ部「精神哲学の行方」では,ベルリン期に結実する「精神哲学」の背景にある,美術収集家のボアスレなどとのハイデルベルクでの交流を探求する。
従来のヘーゲル研究で常識・定見とされてきた事柄に検討を加え,新たなヘーゲル哲学の見方に挑んだ力作。
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