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ドイツを拠点に活動する西川勝人(1949?)は、光と闇、その間の漠とした陰影に心を配り、多様な技法を用いた作品を、40年以上にわたり手がけてきました。抽象的なフォルムをもつ彼の白い彫刻は、木や石膏を用いた簡素な構造ながら、表面に淡い陰影を宿し、周囲の光や音さえもそっと吸い込んでしまうように、ただ静かにあります。存在を声高に主張することも、個性を高らかに示すこともしません。写真や絵画など、彫刻以外の制作においても、これは変わることのない最大の魅力です。???本展は、1980年代より現在まで、一定して静けさという特質を保持し続ける西川作品の美学に触れる日本初の回顧展です。彫刻、写真、絵画、ドローイング、インスタレーション、建築的構造物の約70点が、作家自身の構成によって展示されます。静寂が拡がり、静謐さに包まれた空間で、私たちはどのような情景と出会うのでしょう。日常から隔たった美術館という場において、観想に耽る一人ひとりのための展覧会です。
展覧会図録では、作品撮影も含めて作家である西川自身が撮影した写真で全ページを構成しています。インスタレーションビューも交え一点一点丁寧に紹介することで、静寂の中にそれぞれのマチエールが浮かび上がってきます。白さの中にあるグラデーションを表現している作品と呼応するように、装丁も白の中に2種のエンボスで表情を出しています。作家としての西川の創作のエッセンスが本全体に凝縮されたアーティストブックのような一冊です。
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