2015年チャールストン、18年ピッツバーグ、19年パウウェイ、同年エルパソ――近年米国では極右による銃撃事件が多発している。さらに、大統領選挙結果を受け入れないトランプ支持者による2021年1月6日の連邦議会議事堂襲撃は、世界中に衝撃を与えた。しかしこれらは、決して新しい事象ではない。米国の極右テロリズムは1970年代後半にさかのぼる歴史があり、なかでも95年のオクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件は168人もの犠牲者を出した。
こうした暴力は、過去の平穏を取り戻すという使命の下の結束と、反政府主義を特徴とする。彼らにとっての平穏とは、人間を人種、性別、宗教で分類し、キリスト教徒の白人男性が最高層を占める世界を指す。暴力を駆動するのは極右流の加速主義であり、憲法修正第2条の保障する銃所有権の死守は、至上命令である。決定的な銃規制の導入は、この場合何を意味するだろう。
約3億3000万の人口に対して個人所有の銃器が4億丁あると推計され、政治目的の暴力行使は「ある程度正当化される」と考える人が左右を問わず増加している。本書は極右テロリズム研究の第一人者と若手研究者との共著による、この分野の決定版であると同時に、危うい均衡の上に民主制が成立しているこの国を知るための、非常に有益な一冊ともなっている。
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