戦略文化 脅威と社会の鏡像としての軍

戦略文化 脅威と社会の鏡像としての軍

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出版社
日経BP
著者名
坂口大作
価格
3,850円(本体3,500円+税)
発行年月
2024年10月
判型
四六判
ISBN
9784296120635

『失敗の本質』は、日本軍を題材に日本的な組織の欠陥を明らかにした稀代の名著だ。では、そのような問題点をはらんだ軍の型はどのように形成されたのか。本書は、軍の型は脅威と戦略、そして文化によってつくられるという戦略文化の考えに基づいて、日本の軍の根源に迫る試みである。

 一国の軍や軍事制度の性格は多くの場合、二つの要求によって形作られる。一つは脅威への対応を含めた国家の戦略的要求。もう一つは、社会の価値観や規範等を含む文化的要因である。軍隊は社会の鏡像と言われるほど、意識的あるいは無意識的にその国固有の文化から強い影響を受ける。地理的条件や民族的特性、自然環境や宗教、世論や社会思想等が創り出す文化は、軍の性格を決める基盤となる。

 例えば、他国から武力侵攻を度々受けてきた国では、外的脅威に対する恐怖観と国防に対する強い信念、軍事を重視する価値観が形成され、国力を結集した屈強な軍ができやすい。反対に安全保障に恵まれた地理的環境にあり、外敵との交戦経験が少ない国家には、平和的文化が根付き、軍はその国の文化を反映し、その点で国民的性格を帯びたものとなる。軍の姿とは、国民の意思の反映であり、社会の価値観を作り出す文化とは、軍の外面ではなく内面的強さの真髄、言わば「魂」を創り出す役割を果たしている。

 また、「脅威」と「文化」の間には相関性があり、脅威が弱まれば文化の影響は強まり、脅威が強まれば文化的要因を度外視せざるを得ない戦略がつくられる構図となっている。なぜなら、間近に脅威が迫っているにもかかわらず、反軍的な文化ばかりを優先すれば、その国家は滅びてしまうであろうし、逆に脅威もないのに意味なく軍事力を高めることは、限られた国家資源を無駄に浪費するばかりか、近隣諸国との間に安全保障のジレンマを生みかねないからである。軍の型は「脅威」と「文化」のバランスと調和によってつくられていると言ってよい。

 日本の近代陸軍を形づくったのは、まぎれもなく幕末から押し寄せた列強からの「脅威」であった。日本には、脅威に対応し、いち早く近代国家を築き上げるための強い軍が必要であった。日露戦争後、脅威から幾分解放されても、脅威への対応と野心的な国策を満たすための大陸政策と攻勢的戦略が引き継がれ、軍は「外征軍」となったことで発展した。しかし、そこに作用していたのは、脅威だけではなく、社会思想や世論、民族意識やアジア蔑視といった日本人のアイデンティティをバックボーンとした文化でもあった。                                                          本書は、日米両軍を事例に、両軍がどのような「脅威」と「文化」の影響を受けて建軍され発展してきたのか、特に社会がどのように軍を受け入れてきたのか、両国の文化的側面にスポットを当て、両国の戦略文化を明らかにしていく。

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