○読者対象
本書は、理工系のみならず、文系や芸術系でテクノロジーに興味のある学部生、大学院生を主な読者対象としています。また、音楽だけではないサウンドに興味はある社会人、テクノロジーを用いた音の表現やデザインの進路を検討している高校生も対象となるでしょう。
○書籍の特徴
本書は「サウンドデザイン」というキーワードの下、様々な音のデザインに関連するトピックについて各専門分野の研究者によって書かれたものです。私達の耳に届き、イメージを想起する音のデザインは、映像やビデオゲームなどにおける臨場感の演出や情報伝達という役割があります。しかし、それ以外にも楽器やインスタレーション、建築という場で新しい体験をもたらし、文化を生み出す機能もあります。音を客観的に捉える「耳」を養うこともサウンドデザインの範疇と言えます。それらを含めた音という不可視なメディアが生み出すサウンドデザインの世界を概観することを試みました。
○各章について
本書は、サウンドデザインの事例や研究に触れる6つの章から構成されています。独立した章なのでどの章から読んで頂いても構いません。
第1章では、ビデオゲームにおける効果音制作にまつわる事柄、そして未来の可能性について解説します。
第2章では、インタラクションを伴った「共遊楽器」がもたらすマルチモーダルな体験について解説します。
第3章では、「音のメディア考古学」と題するアプローチ方法でかつてのサウンドアートを「発掘」し、「解釈」して蘇らせたプロジェクトを紹介します。
第4章では、建築においてデータを音楽で表現するサウンドデザインについて論じます。
第5章では、音を表す定量的な数値・尺度などを理解する能力を獲得するプログラムについて解説します。
第6章では、映画、アニメをはじめとする商業のサウンドデザインを対象として、その概念と研究について紹介しています。
○著者からのメッセージ
現在、生成AIのブームが全世界的な潮流となっています。音についても作曲をはじめとした様々な音の処理を人間に代わりAIが担う試みが多数登場してきています。おそらく様々な部分がAIによって自動化、効率化していくことが予想され、それはサウンドデザインの分野も例外ではありません。しかし、本書で数多く挙げられている、サウンドデザインの原理原則や人間自身の手や思考によって構築されたサウンドデザインの事例、研究対象に目を通して頂ければ、人間の発想の豊かさ、地道な試行錯誤の末に創り出されるものの価値に気づくでしょう。そして、それらを踏まえた上でのAIの機能性との住み分け、または共存への道筋やヒントを見出すことができるかもしれません。これまでのサウンドデザインのみならず、これからのサウンドデザインについて考えてみたい方々にも本書を手に取って頂きたいと願っています。
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