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本書は、教職課程における「教育の基礎的理解に関する科目」の一つに位置付けられている「教育の理念並びに教育に関する歴史及び思想」を学習するためのテキストである。
理想の教育を追求するうえで、その理念が重要であることは言を俟たないが、「理念」について学ぶことは実は難しい。私たちは目の前の教育実践を観察することはできても、その背後にある理念を同じように捉えることはできない。また、私たちは言葉を通して教育の理念について学ぶが、理念をもし単なる言説と見るならば、教育の現実とは無関係なものとなってしまう。教育の理念について学ぶ際に意識すべきことは、それを教育の現実を変える可能性を持つ力として捉えることである。教育の理念と教育の現実との交わりは、過去の教育の「歴史」の中に豊富に見出すことができるため、本書は教育の理念を歴史的展開に位置付けて学習できるよう編集した。
教育の理念は、過去のさまざまな教育思想の中に見出すことができる。教育思想家や実践家たちは、それぞれが生きた時代背景や各自の課題意識の基に、子ども、教師、人間、社会、学校などに対する考察を重ね、理想の教育の在り方を提起してきた。先人たちの思索に学ぶことは、教育に対する読者の視野を広げる手がかりとなるであろう。また、教育の理念と歴史を学んでいくと、理念がその提唱者のみの問題ではなく、それを受容する人々の問題であることにも気づかされるであろう。教育の歴史の中には、ある理念が革新的な教育現実を生み出す一方で、理念がその提唱者の手を離れ失われていくこともあるからである。さらに、過去には教育思想家や実践家が教育の理念を掲げただけでなく、国家が示した教育政策上の理念も存在する。そうした理念が、教育の現実に何をもたらしたのかを学ぶことも、これからの教育の在り方を考える一つの材料となるはずである。
本書は第Ⅰ部「西洋における教育思想と学校の歴史」、第Ⅱ部「日本における教育思想と学校の歴史」、第Ⅲ部「教育の諸課題と学校」から構成されている。第Ⅰ部と第Ⅱ部は、西洋と日本における教育思想と学校の歴史を古代から近・現代に至るまでの時系列に沿って取り上げている。第Ⅲ部は、現代社会の中で近年浮上している教育の諸課題に着目し、テーマ史的に内容を構成した。教職を目指す読者が、自らの教育観を問い直し、教育理念を形成していくための糧として本書を活用していただけたら幸いである。(「まえがき」より)
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