近年、文科系の学問分野(特に心理学・社会学)に於いて実証研究が重視され始めており、大学教育でもその比重の高まりつつある。これらの分野では、学部・大学院の課程で統計学は必須の科目とされているが、文科系学部ということから数学が不得意な学生は少なくなく、さらには文科系の研究者の中でも統計分析に疏いということも少なくない。
また、統計分析ソフトの利便性が飛躍的に向上してきたこともあり、データさえ用意できれば必ずしも統計分析の理論を知らずとも、分析自体は容易に実行できるようにはなった。しかしその結果、不適切な使い方による分析が行われ、疑問を抱かせる研究報告が見受けられることがある。
本書はこうした事情を鑑みて、文科系学部における著者らの長年の研究実践と指導経験を基に、学生・大学院生・研究者にとり、「真に」役立つデータ分析の入門書を目指して解説したものである。
全体として数式は最小限にとどめ、数学に必ずしも明るくない読者でも統計学の基盤となる考え方を十分理解できるように心掛けた。扱うトピックは、心理学・社会学の主要な研究パラダイムを広く論じ、読者それぞれに適合する分析技法の習得を目指した。具体的な解析では、この分野で最も使われる統計分析ソフト「SPSS」の導入から活用法まで紹介し、読者の研究に直ちに応用できるような実践的手引きを行う。
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