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太陽が形づくる光と影、地が生成する水や石、大気が織りなす風や雨。美術家・内藤礼は、私たちの傍らにある自然の諸要素と日常のささやかな事物を受け止めることで、私たちが日々見過ごしがちな世界の片隅に宿る情景、知覚しがたい密やかな現象を見つめ、「根源的な生の光景」を出現させてきました。精緻に構想されるその作品世界は、普遍的な視座を持ちながら、その場を訪れる人をそれぞれの沈潜にいざないます。
150年の歴史を持つ東京国立博物館(東博)で開催の展覧会「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」は、東博の収蔵品、その建築空間と内藤との出会いから始まりました。1万年という時を超え、内藤は縄文時代の土製品に自らの創造と重なる人間のこころを見出しました。それは、自然・命への畏れと祈りから生まれたものであり、作家はそこに「生の内と外を貫く慈悲」を感じたといいます。生の求めに迫られてつくりだされた一つ一つの土製品は、人間本来の姿を私たちに伝えるようです。自然光に照らし出される展示室では、かつて太陽とともにあった生と死を、人と動植物、人と自然のあわいに起こる親密な協和を、そっと浮かび上がらせます。
図録を兼ねた本書は、時空を超えた交感がなされる東博の3つの会場を、畠山直哉が撮影し、会場を巡るように構成されました。また内藤の3篇の詩とあわせ、研究員・学芸員による3本のテキストにより、展覧会や作品への理解、考古について、より深く読み解くことができます。
色彩に生を、風景に物語を、光に祈りを見出す内藤の作品は、縷々として尽きることなく私たちの世界を満たしてきた、遥か遠い時代から続く創造の営みを想起させます。そこには、人間が繰り返してきた「つくる」ということ、今につながる「生きる」ということへの希求が垣間見られます。
原始この地上で生きた人々と、現代を生きる私たちに通ずる創造の力を感じられる一冊となりました。
寄稿
内藤礼
鬼頭智美(東京国立博物館学芸企画部上席研究員)
三本松倫代(神奈川県立近代美術館主任学芸員)
品川欣也(東京国立博物館学芸研究部主任研究員)
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