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本書では行事を軸に、すべての生徒にフローのある活動ができる場を保障することの意味と効果を、生徒の活動に即して述べてきた。いじめを生まない学級づくりのカギは、夢中になれる活動を仕組み、生徒間のコミュニケーションを深めることである。
一方で、行事によるフローとここで生まれるコミュニケーションを活用するこのやり方が、中学生においてどれだけいじめの芽を摘む効果があるのか、まだ疑問が残るかもしれない。また、現在の労働環境においては、本書の具体例のように取り組むことはできないと思われてしまう懸念がある。
生徒は、学校が常に楽しくワクワク感に満ちた場であることを願っている。生徒の地味で真っ当な願いに応えることができるのは学校の教師のみである。「忙しいから無理」と可能性を排除するのではなく、現に行われている行事を本書のような視点で再検討して、どこか一点からでも生徒が従来との違いを感じ、生徒の活力を展望の見える方向に育てて欲しいと願っている。いじめの問題は、この過程で限りなく縮小する。それは教師の負担軽減への道でもある。
できれば行事の意義を職員研修の場で検討してほしいが、これは同僚職員の問題意識が乏しければ現実的ではないだろう。しかし、学級担任のレベルで部分的にでも本書のように取り組むことは可能である。こうした実証的な教育実践の成果が学級から学年に広まることにより、学校が無理なく変わっていくことを期待する。
手始めに体育祭の感想文を書かせ、学級全体で交流させ、生徒の変容を観察してはどうだろう。行事をてこに生徒間のコミュニケーションを重ねるにつれて、生徒の瞳は生き生きとしてくるはずである。
教師が生徒の願いに寄り添った動きをすれば、楽しい中学校生活を過ごしたいと願う生徒は教師の期待に必ず応えてくれる。私は、このような教師が一人でも増えることを願っている。それがいじめの芽を摘むことになる。
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