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昭和期に活動していた謎多き口語自由律の歌人、小関茂。
彼が生前に遺した、諦念とニヒリズムに満ちた不思議な魅力を放つふたつの歌集をひとつにまとめて復刻。
栞(小冊子)付き、執筆者はphaさん、東直子さん、町田康さん。
【代表歌】
風が飛んでくる、風を裂いてゆけば、森の上のコンクリートタワー
自分がちっぽけにちっぽけになって歩いてるいちめんの麦の芽の中を
なんといふたのしさだ、なんといふさびしさだ、なんといふ長い橋だ
にんげんが原っぱの中から出てきたよ、みんなすゝき持ってこっち見たよ
こんなことが、こんなことが、生きていることだったんだ。こんなことが
笑った。むざんにも笑った。弁解しないために俺は笑った
俺は俺に唾を吐きかけた。だがやっぱり俺を抱きしめていた
俺はあぶなく茶碗をわるとこだったので、窓から茶をぶちまけた
ヨーヨーをやってみた。誰も満足に出来ないのでみんなそれで満足した
橋のむこうを見ていたが、そうだ、幾年も俺はふせぐことばかり考えてきた
ひとりでに頭を低れ、だれにとも知らず、ただゆるされたいとねがう
おまえそれは何かを捧げ尽くそうとして捧げきれなかった悲しみなのか
一人の俺は野垂れ死んで夜通し唄っていたばかの方は生きてるらしいな
夢も見ずに眠れるんだからそりゃたしかに悪はしてないんだね
三年間食うや食わずでためたのに殖産金庫でフイでさと豆腐やは笑う
おやここにも腰ぬけ人生よしなよ坊やと手をふる親父もインテリか
意味もなく一本のマッチ燃えるまで見ているというそれだけのこと
愛とか恋とか生活とかいってもしょせんは餌と子孫のための五十年です
猫にもノイローゼがありまして家の餌よりはごみためが好きなんです
こんな夜も人工衛星は回っているのねうん彼も自然の一部になったからね
煙草の火をじっと凝視めることもある人が見てなきゃ硝子ぐらい割るさ
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