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音響学とオーディオは、非常に深い関連はありますが、同じではありません。オーディオは趣味性が高い世界なので、必ずしも物理学に支配される必要はなく、個人がよい音と感じればそれでよいのです。しかし、他人にとっては一般性のない経験則に支配されたり、未確認なことを確認済と錯覚してしまったりすることで、もっと近道があったのに、遠回りしてしまうなら、それは「趣味だから問題ない」とばかりは言えないのではないでしょうか。限られた資金と時間で、効率的に良い音を手にするには、科学的発想は少なくとも「便利」だ、というのが本書の趣旨です。
科学的というと、人に聞こえない2万Hz以上を再生するハイレゾは意味がない、とか、高価なオーディオ機器でも数値特性は同じだから、音が良いと思うのは錯覚だ、などの論調を想像されてしまうかもしれません。しかし、本書の趣旨はそういうものではないことを最初にお断りしておきます。安くても良いものはあるにしても、高価な機器でなければ絶対に聴けない驚愕の音も確かにあるのです。本書での筆者の提案は、論理に沿った「科学の作法」の導入です。例えば、音が変わったなら、科学的な理由を考えてみましょう。逆に、ある説について、「それは迷信だ」と思う前に、「本当なのだとしたらなぜか」と考えてみるのも大切です。
2024年の増補版では、「アナログレコードの科学」を追加しました。感覚的なアナログの魅力を伝えるのではなく、関連する科学、技術、根拠のある正しい調整法などを正確に伝える情報を中心に書き加えることで、本書の役割をさらに広げようと思いました。これが増補版の目的です。
本書が、読者の皆さんがより効率よくオーディオを改善していくための一助になることを願っています。
★各章について★(※詳細はコロナ社HPにてご確認ください)
1.アースと電源配線の科学:アースと電源配線の科学を解説します。アースを繋いだほうがよい場合と繋がないほうが良い場合があるのです。
2.CDとハイレゾの科学:CDとハイレゾの技術を実験結果を交えながら解説します。CDの音についてのよくある誤解についても、そのどこが誤解なのかを説明します。
3.SACDの科学と高音質の秘密:SACDを解説します。SACDの音が優れている理由は超音波まで出せるからではないのです。
4.室内音響の科学:室内音響とその調整を一般家庭での部屋の大きさを前提に解説します。単純な試行錯誤では遠回りになりましょう。ここでも科学的な思考が役立ちます。
5.接続ケーブルの科学:接続ケーブルの科学を解説します。ケーブルで音を調整する前に、まずは科学的に正しく接続しましょう。
6.アナログレコードの科学:アナログレコードの科学を解説します。デジタル機器より調整による音の変化が大きく、その科学を理解することは良い音への近道です。
7.あると役立つ測定機材:比較的低コストで入手できる測定機材とその使い道を紹介します。
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