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『九十五歳 みどりさんの綴り方』は、コロナ禍で会えない息子に宛てた手紙から始まる。大学で農村の生活改善についての研究を続ける息子は、母親であるみどりさんに手紙である問いかけをする。「たずさわった仕事の経験と暮らしの中で身につけた技の数々を思い出して手紙に書きとめて欲しい」と。最初は息子の問いかけに答える内容だったが、すぐに自分の書きたいこと書いて送るようになるみどりさん。その内容は戦中戦後を生きた昭和史でもあり生活史とも読めるものだった。
みどりさんの人生は、昭和、平成、令和という時代の変遷と共に、信州での生活史を織りなしている。3歳で母と死別後、祖母に引き取られ養蚕業を手伝いつつ成長していく。女学校へ進学したが、戦時中の学徒動員により工場労働に従事し、戦後は様々な職を経験しました。
人生を大きく変えたのは、夫である万吉との出会いです。ソ連での4年に及ぶ捕虜生活から帰国した万吉は、国鉄が進める強引なトンネル建設計画に反対し、その運動をみどりさんが支えました。万吉は後に市議会議員としても地域に貢献しました。また、万吉が爆破未遂事件で冤罪の疑いをかけられた苦労も詳述されています。
表紙・口絵の写真は2024年木村伊兵衛賞ノミネートの金川晋吾。
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