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本書は、基礎となる数理・物理から出発し、丁寧なステップを積み上げながら、量子力学のスタンダードな計算を自分の手で実行できるようになることを目指す、独習可能な教科書です。
? 言葉や雰囲気だけの量子力学では飽き足りず、
? 誤魔化しなく、自分の言葉で量子力学を理解したい、
? けれども、専門書の行間を埋めながら読むのはちょっとつらい ?
という方を想定しています。社会に出てから改めて学びたくなった方や、量子力学に初めて触れる大学生がちょうど当てはまるでしょう。高校数学から説明しているので、学ぶ意欲があれば高校生でも読めるはずです。
大まかな構成は以下の通りです。
出発点は古典力学です。古典と侮ることなかれ。ニュートンの運動方程式を突き詰めると、「時間発展はハミルトニアンによって生成される」という理解に到達します。この構造は、量子力学にそのまま受け継がれる非常に重要なものであり、量子の世界へのアクセスポイントになります。
続いて、量子を表現するために必要な数理の代表格、線形代数の基礎を構築します。具体例を用いて、ベクトルの本質が線形性にあることを学び、それを自然に抽象化することで、量子の道具であるベクトルと線形演算子の概念を手に入れます。これらの理解を総合し、ハイゼンベルク形式の量子力学、別名行列力学を構成することが前半の目標です。
ハイゼンベルク形式は、古典力学との接点が見やすい半面、少々扱いづらいのが難点です。そこで私たちは、量子力学を、より扱いやすいシュレディンガー形式、別名波動力学に書き換えます。これによって、いわゆる「シュレディンガー方程式」という、扱いやすい微分方程式を通じて量子力学を扱えるようになります。
ここから先は、論点が「量子力学を構成すること」から「完成した量子力学を使って自然現象を説明すること」にシフトします。量子力学で説明できる自然現象は多岐にわたりますが、本書では、シュレディンガー方程式が手計算で解けて、量子の典型的な特性を学べる題材に絞ります。具体的には、外力が働かない自由粒子、ポテンシャル障壁をすり抜けるトンネル効果、解ける量子系の典型例である調和振動子、そして、量子力学の金字塔である水素原子について個別に解説します。
これらをひと通り学び終えた暁には、皆さんは自信を持って、「私は量子力学の基礎を修めた!」と言えるようになることでしょう。
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