「COARA」と情報市民公社

「COARA」と情報市民公社

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出版社
日経BP
著者名
尾野徹
価格
2,750円(本体2,500円+税)
発行年月
2024年8月
判型
A5
ISBN
9784296122851

「One Person, One Homepage」「www-diary」「ネット放送」「ADSL実現」……。
地方でいかにして名も無き市民たちがネット社会を実現させたのか。
「地域が舞台、みんなが主役!」と熱い思いを抱き、 行動した巧者たちの記録。

「大分パソコン通信アマチュア研究協会」の英語の頭文字から名付けられた市民団体「COARA」。本書は、地方中小企業経営者である著者が、自社の存続に思い悩みつつ、その過程で同団体の創設に携わり、事務局長を経て株式会社化した後の社長も務めた経験をもとに、「COARA」の歴史や活動の経緯を克明に書き下ろしたものです。

 パソコン通信による「電子会議」を日本で極めて早い時期に実施したのも同団体で、「毎秒300ビット」という現在の通信速度と比較すると超低速の接続からスタート。その後、大分県の主要箇所をパケット通信でつなぐ「豊の国ネットワーク」を自ら構築し、1994年には日本初の個人向けホームページ開設サービスを開始しました。翌年に「Windows95」が発売されたことを考えると、彼らの先進性が伺えます。さらにブロードバンド接続環境を実現しようと、当時米国で使われ始めていたADSL技術をいち早く導入、99年に日本初のADSL接続サービスを始めたのも同団体でした。

 日本にインターネットを広めた企業には、大手のネット接続サービス会社が多数ありましたが、資金力に乏しく、法人でもない任意団体が、地域のために地場インフラとなるネットワークを自ら整備したことは、世界的にも例がなく、国内外から大きな注目を集めました。

 また同団体が他のネット先駆者と大きく異なるのは、インターネット整備を「地域興し」として捉えていたことです。市民が情報発信の主役となれるよう「情報市民公社」と呼ばれるビジョンに同調し、大分県をはじめ、当時の郵政省や通商産業省、NTTなどと官民一体で先進的な施策を実現してきました。

 情報通信関係者のみならず、ネットワーク構築に興味を持つ一般読者にとって興味深い内容で、地域力の創造や地方の再生、地域興し、地方中小企業の経営などにもヒントが満載の一冊です。

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