本書は、ティーチング・アーティストの存在や社会的有用性が理解されていない社会を変えていくために、ティーチング・アーティストのエリック・ブースによって書き下ろされた提言の書であり、そうした状況に一石を投じる一冊。ティーチング・アーティストとは、創作や表現、演奏等の活動と同時に、観客や聴衆がより深い芸術経験をより効果的にできるように、教育活動を行う芸術家のこと。もとは1980年代のアメリカで公教育から音楽教育が排除されたときに、プロの音楽家たちが学校に赴き、子どもたちに音楽を届けた活動にはじまる。現在世界では、音楽を含む多岐にわたる芸術の分野で、このような芸術家(ティーチング・アーティスト)が活動している。しかしコロナ禍以降、芸術活動はいまだ低迷し続けており、世界中のティーチング・アーティストは、社会での認知も進まない中で活動を継続している。本書は著者と親交のある訳者ならではの翻訳となっており、芸術や音楽の世界が新たな時代を迎えるための貴重な一冊となるだろう。
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