多くの建築家がデザイン重視の「美術建築」を目指すのに対し、東畑謙三はデザインはもちろん、依頼された建築はどうあるべきか、その本質を考え抜いて設計した。1902年三重県の学者一家に生まれ育った東畑は京都帝国大学建築学科卒業、同大学院終了後、武田五一教授の下で東方文化学院京都研究所(現・京都大学人文科学研究所附属漢字情報研究センター)を設計。1932年、欧米の建築を視察した後、東畑謙三建築事務所開設。岳父・岩井勝次郎(岩井産業創業者)の支援も得て工場などの産業建築、公共建築、都市再開発など幅広い建築の設計を行う。日本建築学会理事、日本建築家協会理事、日本建築協会会長等を歴任、1970年日本万国博覧会では建設顧問・会場計画委員として大きく貢献。日本建築学会賞・建築業協会賞など受賞多数。藍綬褒章・紺綬褒章・勲三等瑞宝章を受章。1998年、97歳で没。
一般には知名度は高くないが、建築業界はじめ藤森照信氏など多くの研究者に高く評価されている。関西ペイント旧本社ビル、寧楽美術館、辰馬考古資料館、繭山龍泉堂、壺中居、大阪駅前第1ビル・第4ビル、日商岩井大阪本社などを手がけた。古書、古地図、陶磁器の世界的なコレクターとしても知られる。傑物で厳しい人だったが、人をそらさない魅力があった。
専門家による各章論考の前に、建築学科の女子大学生と東畑謙三がモデルの人物との対話を置き、建築に詳しくない人にも読みやすくしている。
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