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2023年度から全国の学校で「生命(いのち)の安全教育」が本格的にスタートしました。
これは文部科学省が、「子供たちが性暴力の加害者、被害者、傍観者にならないよう、全国の学校において」推進する、「性教育」です。一方、世界に目を転じると、2009年、ユネスコが中心になって作成した「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」が発表されました。これは、性教育についての新たなとらえ方とその具体的な実践の在り方を提示したもので、「包括的性教育」の進め方を記したものとして、いまや性教育の国際的指針となっています。
さて、本書のタイトルにもなっている「包括的性教育」とは、何でしょうか。それは、これまでの身体や生殖の仕組みだけを教える「性教育」でなく、人間関係、性の多様性、ジェンダー平等、幸福など幅広いテーマを含む教育のことです。文科省が推進する「生命(いのち)の安全教育」は、いわば包括的性教育の一部分といえるでしょう。
男女共同参画および人権政策を進める上で、今後は「包括的性教育」が学校現場で主流になってくると考えられます。けれども、いきなり明日から「包括的性教育」をやってくださいと言われても、その背景、教育理念がわかっていなければ、ただマニュアルをなぞるだけの授業になってしまいます。
本書は、タイトル通り「包括的性教育」をはじめる前に、教師や保護者が知っておきたいことを簡潔にまとめたものです。小中学校での「包括的性教育」の実践例も掲載しており、理念と実践を同時に学べる本となっています。
教育関係者だけでなく、教師を目指す学生、ジェンダー平等社会の実現を願う人たちに、ぜひとも読んでほしい一冊です。
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