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曳いて来し山羊に曳かれて青き踏む
九年共に暮らした山羊のうしお君との思い出は尽きない。最期を看取った順一さんの姿
は本当の家族そのものだった。山羊の好んで食べていたものなどを見るたびにこれからも
思い出されることだろう。本集はうしお君追悼の思いで編むことを決意されたという。幸
せな山羊だったとつくづく思う。
(序より・名村早智子)
●自選十句
屈ませるちから菫のそのどこに
踏まれたる草の芽むんと戻りけり
本といふ窓の形や緑さす
滝に身を貫かれたく仰ぎけり
身の冷えてなほ一瀑を去り難し
尾頭は地球の裏か鱗雲
この膝も岩場の一つ赤とんぼ
梟の飛ぶ構へして糞放つ
放たれし山羊吸はれゆく夏野かな
秋草の香りもろとも子山羊抱く
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