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「その時、僕の大事なものは全部確実に僕自身を含めて確かにこの世界に存在し続けている。
この本は誰もが感知して忘れてゆく光の尊さに満ちている。光は時間である。今、毎秒生まれる、懐かしい未来の想い出がある。」
― 富澤大輔
「すべての出来事を忘れたくない」
この世にそんな未練を残した幽霊のお散歩の気分で、中判フィルムカメラによって撮影された全170点のカラー写真。作家にとって初の大判写真集。
人はなにか大きな出来事に立ち会うと、そこを拠り所にして、依存していく。しかし「なにも起きていない瞬間」なんてこの世には無かった。それを鋭敏に嗅ぎつけ、小さく小さく、しかしたしかにカメラに収める。はからずも『字』『平行写真』から連なり、シリーズとなった三部作の最終作品。
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単なる道路や、富澤さんの友人が写された写真に第三者が懐かしさを覚えるのは、本来はおかしい。写真の中の、見たことがないはずの風景に対して懐かしいと感じる。その理由を、フィルムの質感や色合いという特性だけで片付けることはできない。生き物として懐かしさを感知する原始的な器官、懐かしさの根っこのような部分に触れてくるものが「遊回」にはある。それが富澤さんの写真だと思う。海に沈む太陽を見た時に感じる郷愁は、DNAに記録された太古の記憶である......みたいな話を何かで読んだ、そんなことを思い出す。
(明津設計)
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