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傷つき、色あせた作品に「延命」を施す保存修復の仕事。修復士たちが作品を前に重ねてきた試行錯誤の歴史を豊富な実例と文献から丹念に読みとく。修復されるのは時を経た絵画ばかりではない。公共空間のなかにあって変容しつづけるパブリック・アート、落書きや切り裂きなどの「ヴァンダリズム」を被った絵画、多様な素材から構成される現代美術の作品群への介入は、いかなる思想と技法をもって展開されるのか。
【目次】
序章 「診断」
第一章 洗浄の哲学──可逆性
1 「ここに、特定の「病気」は存在しない」
2 古色再考
3 近現代フィレンツェの修復学
第二章 補彩の技法──判別可能性
1 「再び花開く」こと
2 作者を騙る──贋作、複製、偽造
3 中間色の考案
第三章 甦る芸術の生を求めて──適合性
1 素材の調和へのまなざし
2 副次的なものと保存修復
3 ヴァンダリズムとバーネット・ニューマン論争
第四章 修復という「?/ファンタジー」──最小限の介入
1 介入倫理
2 「不変」の創造は可能か
3 パブリック・アートの救出
第五章 欠落と証言のアーカイヴ──保存修復としてのドキュメンテーション
1 記憶し、救い出すこと
2 ドキュメンテーション制度の起源
3 現代美術への介入
第六章 保存修復学再考──「修復は、一瞬の閃光ではない」
1 ブランディ『修復の理論』のアクチュアリティと応用可能性
2 日本とイタリア修復学の交差
3 修復における「余剰なもの」「埃」
資料 ウンベルト・バルディーニ『修復の理論──方法論の統一 第一巻』
あとがき
平凡社ライブラリー版?あとがき
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