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新仮名遣いで読みやすくなった
塚本ワールドに最適な一冊
皆川博子さん激賞!
塚本邦雄に導かれ葛原妙子の宇宙を逍遙する
これにまさる贅沢があらうか
深い教養の泉から湧き出づる叡智を養ひとした大輪の花々は洞察の力を芯に秘める
『百珠百華』は、私の久久の幻想紀行でもある。
できるかぎり多種多様な主題の作品に目を向け、秀作の誉、夙に高い作品も、隠れた絶唱
と信じるものも、逸しなかったつもりだ。(本文(「跋」より)
『葛原妙子歌集』、『鷹の井〓』、『鷹の井〓』上梓以後の作品、「短歌」「短歌研究」「短歌現代」、「をがたま」一九八二・冬号までに発表された作品中から厳選。
解説:尾崎まゆみ「六弁六雄蘂の聖花」
【本文より】
先蹤(せんしょう)のない文学はない。すべての短歌は広義の本歌を持っている。
真の独想・独創を期するならば、作家は、たとえばエスペラント語のような「新しい言葉」の創造から始めねばなるまい。また、たとえば、そのエスペラントすらラテン語という先蹤もしくは本歌があることに思い到れば、潔癖にそれらを拒み通す時、少なくとも詩歌人は〓になる他はないだろう。その〓になることすら、死その他種種の方法によってことばを絶った先人のミミクリーを演じていることになるのだから、残された「創造」など皆無ということになる。
私は時として、私にこうまで鑑賞欲を唆(そそ)る作品に嫉妬した。
作者がただ一言、「花」と歌った時、その一首には花の持つ、あらゆる概念が集積され、すべての要素が匂い立つ。それを証するために、私は「百華」を、負けじと動員せねばならぬ。玲瓏たる二顆の珠玉の触れ合いを、言葉を以て伝えるには、私は百顆の珠をかき集めて、それを再現せねばならなかった。人はそれを空しく、贅(おご)った所業と蔑するだろうか。
今日、一首の歌に、たとえば五十枚の鑑賞欲を唆るような例がいかほどあろう。そのような歌の作り手が何人いるだろう。稀有であり、常に例外的な存在と言わねばなるまい。
(本文(「百韻朗朗」より)
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