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◆百首シリーズ
名句が気軽に読める百句シリーズに河東碧梧桐が登場!
◆写生文精神
碧梧桐は、単なる俳人ではない。近代文学史や美術史、さらには思想史に位置づけられるべき人である。
田山花袋より二歳年下でほぼ同世代。子規の門下として、〈写生文〉によって磨いた〈本当のことを自分の言葉で書き綴る〉という精神を貫き、碧梧桐は自然主義の書き手となったその力量がもっともよく示されたのが紀行文である。碧梧桐の紀行文は文明批評である。近代文明の現場に出向き、忌憚ない言葉で事実を語る。あまりに生々しく〈本当のこと〉が書かれているため、引用がためらわれる箇所もあり、逆に今の時代が〈忌憚の時代〉であることに気付かされる。
俳句においても、碧梧桐は〈写生文〉の精神を貫くようになる。それが〈新傾向俳句〉である。大正期には子規の言う作句法としての〈写生〉から離れ、また俳句の形式をも捨てて〈本当のことを自分の言葉で書き綴る〉という行為に徹するようになる。
一方で重要なのは、碧梧桐が古典俳句という土台を持っていたことである。古典を知らなければ古典からの離脱はできない。碧梧桐は芭蕉、其角、蕪村をよく読み、特に蕪村については蕪村研究会まで組織して新資料の発掘に努めた。さらに、蕉門の著名俳家はもとより、宗鑑、貞徳、季吟を初めとし、白雄、暁台、蒼〓に至る三十人近くの俳家についての評釈を残している。同世代の誰よりも古典を読んでいたからこそ、その二番煎じに甘んじようとする俳句を許せなかったのである。
(解説より)
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