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悲しみは他人事みたいに遠くって雪の降らない海沿いの町
悲しみを濾過した、この人の優しさがこんな歌を作らせたのか。このように深く切ない母との紐帯を私は知らない。……綿田友恵の歌に私が感動するのは、そのためである。母を敬い、父を恕そうとするこころの温かさと、慈しみのその深さである。
――福島泰樹「跋 サンタクロースは、母さんだった」より
日常の中に溶け込んでしまった悲しみが昇華されたかのような歌の数々。家族、そして故郷の広島をふたつの軸とする、第一歌集です。
自選5首
自ずから伸びるにつれて狂いゆく燃え立つゴッホの糸杉の父
母が頸打たれる音を聞きながら男はすべて滅べと思う
裏庭の枇杷の実を喰むハクビシンのようにわたしも許されていた
アスファルトに硬く孤独な音ひとつ声も上げずに?は夜死ぬ
顎より汗したたりてわが?に痕を残した冷たい花火
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