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ナポレオンの統治について人々が記憶にとどめているのは、国境の外の戦争だけである。
あたかもフランス自体は逆に安らぎの場でしかなく、国内では住民は散発的に起こる経済危機にもほとんど痛手を負うことなく、平穏な生活を送っていたかのようだ。
しかし、ナポレオンの治下において、暴力はいたるところにあった。殺し屋と短刀使いが我が物顔で振る舞う都市、盗賊と脱走兵の一団が縦横に動きまわる農村、密売人の輸送隊が通る山岳と河川地帯──。
判事、警官、憲兵、税関吏に体現されたナポレオンの秩序に、カール大公やクトゥーゾフよりも恐ろしい軍隊が立ち向かった。つまり犯罪者の軍勢である。民法典、大改革、レジョンドヌール勲章によって統治された社会に、殺人者、泥棒、 贋金造り、盗賊、密売人、陰謀家の世界、無法者の世界が対立していた。
本書はナポレオン自身が狙われた「サン=ニケーズ通りの仕掛け爆弾」事件、「短剣の策謀」をはじめ、バルザックの『暗黒事件』にインスピレーションを与えた「元老院議員クレマン・ド・リの誘拐」など数々の犯罪をも取り上げて詳細に分析。栄光のナポレオン時代、その実態を明らかにした好著。
【目次】
序文
第一部 秩序
Ⅰ 警察官
Ⅱ 憲兵
Ⅲ 判事
第二部 無秩序
Ⅰ 犯罪都市 パリ
Ⅱ 重罪人
Ⅲ 泥棒
Ⅳ 贋金造り
Ⅴ 密売人
Ⅵ 盗賊
結論 ナポレオン時代の秩序は神話か?
付録
脱獄した徒刑囚はいかにして警察官となりしか
その他の犯罪事件
原注
年表
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