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本書『TRANS-BODY』は「沼現像」と呼ばれる独自の手法で制作された、写真家・大塚勉の代表作である3つのシリーズ「根茎」「地の刻」「TRANS-BODY」を集成した作品集です。
1991年から1996年ごろに制作された本シリーズは、印画紙を漂白したのち、沼に1週間沈める「沼現像」によって制作されました。沼という自然の暗室によって、印画紙が茶色や青色の独特の色合いに染まり、時に沈澱した落ち葉の模様が残ったり、銀が浮いてきたりして、唯一無二の物質感のあるプリントが出来上がります。
自身を含む男性と女性の身体の一部や、植物をクローズアップで撮影し、それらのネガを複数枚合成して得られたイメージは、男と女、人間と植物、生と死といった境界線を融解した原初的な生命体のように見えます。「沼現像」は、それらの命の姿を、沼という地球の羊水に回帰させる試みのようです。
これらの作品は故郷である浦安のゼロメートル地帯で育まれた土と水の感覚、そしてそれらの原風景が清々しいまでに更地となったあとに、映画制作で自作自演のパフォーマンスをした身体的経験、そして写真というメディアに対する実験的精神が、渾然一体となって昇華したものであると言えます。大塚勉作品の集大成となる作品集を、ぜひご覧ください。
図版50点、テキスト飯沢耕太郎「変容する写真と身体――大塚勉の写真を巡って」、大塚勉「地、水、体の彼方へ」を収録。
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