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オディロン・ルドンは、夢やファンタズマゴリーを描きつづけるとともに、自然のヴィジョンに決してたじろがなかった画家である。
少年の日の記憶、普仏戦争での一兵士としての体験、植物学者クラヴォ一によってひらかれた未知の生命体への驚き、孤高の銅版画家プレダンとの出会い……。ラ・ヴィ、人生、生活、生、こんな言葉がこれほどくり返され、画家の内面がこれほど率直に語られる芸術論は稀れであろう。ここには、20代の若き日から晩年にいたるまで、幻想の画家の人生と芸術と芸術家をめぐる自分自身との対話が記録されている。
「黒と白」の版画の世界、色彩ゆたかなパステル画の群。ルドンの言葉は、彼の作品とともに限りなく美しい。
「天から授かったものに従うことも、自然の命ずることです。私の授かったものは、夢にふけることでした。私は想像の跳梁に苦しめられ、それが鉛筆の下に描き出すものに驚かされました。けれどもはじめ驚かされたものを、逆に私の学んだ、また私の感じる芸術の生理に従わせて、見る人の眼に突然魅力あるものとし、思想の極限にある、言葉ではいい得ないものをそっくり呼び起こすように持っていったのです。……暗示の芸術は、ものが夢に向かって光を放ち、思想がまたそこに向かうようなものです。退廃と呼ばれようが、呼ばれまいが、そういうものです。むしろ我々の生の最高の飛翔に向かって成長し、進化する芸術、生を拡大し、その最高の支点となること、必然的な感情の昂揚によって精神を支持するのが暗示の芸術です。」――オディロン・ルドン
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