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記憶喪失の娘と貴公子の恋は、
春の花咲く日だまりの庭で――。
「きみの名は?」名門貴族ジェームズ・オルドハーストに尋ねられ、
ベッドに寝かされた娘は必死で答えた。「わたしは、アン……」
嵐の夜、ずぶ濡れで行き倒れになっていたところを彼に拾われたが、
彼女は名前以外のいっさいの記憶を失っていた。
心身ともに弱り果て、不安ばかりが募るなか、
何くれとなく世話をしてくれる優しくてたくましいジェームズに、
アンはいつしか特別な想いを寄せていた。
彼は誰もが結婚したいと憧れる、社交界随一の魅力的な貴公子。
出自不明のわたしなんかと関わったら、彼の名誉に傷がついてしまう!
密かに身を引く決意を固め、アンは屋敷からひっそりと姿を消した……。
ジェームズのために身を引いたアンは、本能的に親族の屋敷にたどり着いた翌朝、記憶を取り戻します。しかし今度は、ジェームズと過ごした1週間の記憶が抜け落ちているのでした。名士の令嬢として脚光を浴びるアンは、社交界でジェームズと運命の再会を……。
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