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【「本書」より】(抜粋)
近世期以降、唐話学・白話文献は日本文化に何をもたらしたのか。本書はこの問いに答えることを大きな目標として見据えながら、研究対象としての白話小説の有り方を追求し、更にその研究が漢籍解釈に与えた影響を考察してきた。岡白駒の文事を中心に据えるという方法を取ったため、検討した範囲は決して広くはないが、これまで見落とされてきた問題や資料に光を当てることが出来たかと思う。
……第一部では白駒が行った長編白話小説『水滸傳』の講義について検討する。これが、現在確認出来る白駒の最も早い白話研究である。日本の『水滸傳』研究史においても大変早い時期に行われており、白駒が当時の学問的流行の最先端にいたことや、当時の人々の『水滸傳』への関心の高さを表す興味深いものである。ここでは講義の実態を追求し白駒の白話文解釈のレベルを探るとともに、その講義内容がどのように継承されていったのか明らかにすることを試みる。
第二部では白駒と深い関わりを持った澤田一齋の『水滸傳』研究を取り上げ、白駒の研究内容がどのように引き継がれたのか検討する。更に書肆の主人でもある一齋が『水滸傳』の刊行に関与していた可能性についても探っていく。
第三部では、「和刻三言」の成立を明らかにすることを試みる。白駒が短編白話小説をどのように読んでいたのか、また一齋との認識の相違点等について探る。
第四部では、白駒が徂徠の著書に対して残した著述を分析し、白駒が徂徠の学問をどのように見ていたのか検討する。徂徠を激しく批判した漢学者達の著述にも目を向けながら、白駒が生涯の文事活動を通して確立した言語観について考察したい。
以上の検討を通し、唐話学が近世期の漢籍解釈にもたらしたものを明らかにしていきたい。また、本書を足掛かりとして、唐話学・白話文献の受容が今日までの日本文化にもたらした影響の具体相を明らかにすることを、大きな目標としたい。
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