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1945(昭和20)年8月14日、昭和天皇が終戦の詔勅を読み上げる前日に、その衝撃的な事件は起こった。
日ソ中立条約を一方的に破棄したソ連軍が侵攻。旧満洲国興安総省の葛根廟付近において日本人避難民千数百人に襲いかかる。大殺戮のあと、生き残った避難民は自決を強要され、またその後の地元民の暴徒やソ連兵の襲撃で、生存者はのちに発見された残留孤児を含めても百数十人に過ぎなかった。
凄惨な事件に遭った6人家族の大島家だが、奇跡的に5名が生還を果たす。
その日、ラマ教寺院のある葛根廟の大地でなにが起こったのか――。当時、11歳だった大島家の次男・満吉が事件を振り返る。
終戦から80年が過ぎようとする今も大島満吉氏からあの遥かなる平原からの魂の叫びは消えることがない。
大島氏は語る。「この事件を知る日本人は1パーセントもいないのが実情です。生き残ったものとしてこの事件を風化させてはいけない。後世に伝えるのが私の使命だと信じてきました。戦争は私たちの身のまわりにあるすべてを奪ってしまいます。故郷、財産、文化財、耕地、ペット、家屋、職場、記念品、写真、家具、橋や鉄道……そして親兄弟。失われたものは再生できないもの、二度と取り戻せないものも数多くあります。そして敗戦ともなれば戦後の混乱の中で衣食住に窮するのです。どうかこの本から戦争の虚しさを読みとっていただきたい。平和な日本が長く続くよう願ってやみません」
[本文抜粋]
婦人たちが叫んでいたほうに向けて、ソ連兵は発砲した。ダダダダ、ダダダダ! 直撃された集団の人たちはばたばたと倒れていった。銃弾の音だけではなく、ブスッ、ブスッ、ブスッと肉体に弾が食い込む音までまじる。血飛沫が上がる肉体、弾が当たるたびに跳びはねる身体、助けを求めるように蠢く人、殴りつけるような異常な物音……。もはや、この世の出来事ではない。阿鼻叫喚の声にぞっとする。止まぬ銃声。目をつぶり耳を塞ぐしかない。息もできないほど身体が硬直している。また人の気配がする。恐ろしい。怖い!
[葛根廟事件とは]
1945(昭和20)年、昭和天皇の玉音放送(終戦の詔勅)前日の8月14日に満洲国興安総省のラマ教寺院「葛根廟」付近において発生したソ連軍による日本人避難民虐殺事件。
1945年8月8日、ソ連は日ソ中立条約を破棄して日本に宣戦を布告。10日・11日に興安総省の省都・興安街をソ連軍が空爆する。避難を開始した日本人居留民にソ連の戦車隊が襲いかかる。避難民千数百人のうち、千人以上が虐殺、あるいは自決。その9割が女性や子供であった。あまりにも犠牲者が多かったため実数は把握することができないが、生存者はのちに発見された残留孤児を含めても百数十名に過ぎないという。
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