本書は、「翻訳」を歴史的な事象の中でとらえ直していくことを目的とするものである。
歴史学的に「翻訳」を考えるメリットは、歴史的な知見・研究史に照らして、翻訳を取り巻く長期的諸条件をより俯瞰的に見ていくことを可能にする点にあるといえるだろう。
「私の意図はスペイン人歴史家たちに反論することではなく、彼らの手になる記録に注釈や解説を施すことであり、さらには、……スペイン人たちが、外国人であるがゆえに正しく理解できなかったインディオの言葉の通訳の役目を果たすことだからである。……」(インカ・ガルシラーソ『インカ皇統記』、読者への序言中の一節)
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