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いつの世も、貧困に苦しみながら
懸命に生きる女性はいた
貧しくとも、凜として生きよ――
梅の木に帰郷の望みを託し、夫とわが子のために
命を尽くした下級武士の妻の生涯を描く
何と美しく〈凛として〉切ない物語であることか。
生きることの哀歓漂い、抒情性に溢れた彫りの深い人物造形に定評がある作家による作品である……(中略)
藤原緋沙子が史料を渉猟し、独自の解釈と着想で、“時代小説”の衣裳を着せつつ、史実を超えた物語を
立ち上げていくことを小説作法としている歴史小説作家であることがお分かりかと思う。
――雨宮由希夫氏(解説より)
桑名藩の飛び地・越後柏崎。
海鳴りと吹きすさぶ風、冬は雪に囲まれる僻遠の地に赴任を命じられた者は、島流しとも噂され、
二度と桑名に帰れることはないと言われていた。
渡部鉄之助と妻の紀久は、跡取りの長男を故郷の両親に預け、幼子を抱えて勘定人としてこの地に赴いた。
だが陣屋暮らしは、着物一枚買う余裕もないほど困窮した。
夫と子どものため日々の暮らしを守る紀久の心の拠りどころは、日蓮上人ゆかりの番神堂に植えた、
桑名から持参した梅の苗木。
この花が咲いたら故郷に帰れる――そう信じ、ひたむきに生きる紀久だったが……。
下級武士の妻として懸命に生きた女の一生を描いた傑作時代小説。
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