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九十年の人生を振り返ると、小学校低学年の頃、母から教えられた「過ぎたるは猶お及ばざるが如し」の生き方が、私の人生の「芯」になっていたことを改めて確認した。
少年期から青年期にかけて左翼政治運動の渦中に身を置いたが、周囲はほとんどが極端を好む「過激」派的考えの持ち主ばかりだった。私は、彼らの跳ね上がりを抑える側に立っていたが、つねに孤立していた。政治運動における少数派の運命は、決まって悲惨である。あぶない経験もしたが、「過ぎたるは猶お及ばざるが如し」の中庸思想を貫いて生きてきたつもりである。
左翼運動を卒業してジャーナリズムの世界に入ったが、ジャーナリズムの世界でも「中庸」派はつねに少数派だった。とくにマスコミにおいては「極端」派が多数派だった。しかし、私の心身には「中庸思想」がしみついていて、極端派とは同調できなかった。
孔子とアリストテレスは、私の師である。『論語』と『ニコマコス倫理学』は最も大切な原典である。(著者あとがきより)
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