気管支拡張症 温故知新注目され始めた一大カテゴリー
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気管支拡張症(BE)は、何らかの原因により惹起された慢性持続的な気道炎症の結果、気道上皮細胞の線毛機能障害によるクリアランス機能の低下と、気道壁の支持組織の破壊により気道内径の拡張を呈する形態学的異常を基軸とする疾患である。特発性から様々な基礎疾患に伴うものまで、その背景は様々である。わが国では稀少だが、欧米ではクロライドイオンチャンネルの遺伝子異常により全身の外分泌異常を呈する嚢胞性線維症が気管支拡張症を併発するために注目されてきた。
一方、近年では、嚢胞性線維症と関連しない気管支拡張症(NCFBE)が世界的に注目され、閉塞性肺疾患、気管支喘息、間質性肺炎、肺がん、肺循環疾患などに比肩される呼吸器系の疾患カテゴリーとなり、次第にBEは非嚢胞性線維症の気管支拡張症を示すようになりつつある。欧米では大規模な患者レジストリーが構築され、基礎・臨床の両面から精力的に研究が進み、欧州ではガイドラインも策定され、米国でも準備が進められている。気管支拡張症は、嚢胞性線維症やびまん性汎細気管支炎などからも人種により病態が異なることが示唆され、ホスト側因子の関与が想定される。
一方、約40%を占める原因不明の特発性を除けば、気管支拡張症の背景疾患として先行する感染症は最も頻度が高く、本疾患の経過において重要な位置付けにある増悪を含め、気道系の微生物が重要な役割を果たしていることも考えられている。気管支拡張症の病態においては好中球性炎症が中心的な役割を担っていることを示す報告がなされており、近年、本疾患を対象にして好中球のセリンプロテアーゼを標的とした薬剤が開発され、わが国も参画した国際共同治験において評価が進められている。最近では、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患などに合併する気管支拡張症も注目され、好酸球やリンパ球が関与する病態も指摘されている。アジア圏に注目すると、結核や非結核性抗酸菌症など抗酸菌感染症の罹患率は欧米に比して依然として高く、これらが気管支拡張症の病態に及ぼす影響を検討することは欧米では難しく、アジア圏での解析が必要である。また、わが国では、上気道から下気道に至る慢性気道系炎症にマクロライドが使用されることが多いことや、気管支拡張症において診断的意義が重いCT検査へのアクセスが世界的にも良好であることなどを含めて、わが国独自の視点で気管支拡張症を捉え、疫学や病態を検討することは興味深く、また重要な点である。
一方で、組織破壊を伴い、気管支拡張を伴った気道は修復不可能であり、今後は、ホスト因子や増悪因子の解明により、ある程度進行した状態で診断される現在の基準を超えて、非可逆的な組織変化に至る前に予防、早期治療、進行抑制などを念頭にした介入を可能にする評価法の検討が期待される。
本特集では、国際的に注目が高まっている気管支拡張症について、疾患概念や病態をはじめ、疫学・診断・治療など、様々な視点から学び、理解を深めることを目的とする。日常の診療のお役に立てば幸いである。
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