" 一般に「2つの群作用が軌道同型である」とは、作用する空間のあいだに同型で作用する軌道を保つようなものが存在するときをいう。1959年のDyeの論文が嚆矢となり、爾後、離散群論の発展と伴って様々な群作用に関する軌道同型の研究が進められ、現在では、関数解析・幾何学・確率論などといった広汎な数学の諸分野に於いて、多彩な成果をもたらすに至っている。
エルゴード理論は、端的にいえば「測度空間への群作用を研究する分野」であり、軌道同型理論はエルゴード理論の一分野として位置付けられてきた。しかし近年、軌道同型の研究範囲の多彩さゆえにその枠組みだけで論じることが困難となり、2010年ごろに""Measured Group Theory""という新たな枠組みが創始され、現在に至っている。
本書は、「""Measured Group Theory""のガイドブック」となることを想定し、特に離散群と軌道同型理論に関する基礎概念とその結果、および未解決問題などについて幅広く取り上げる。まず、標準確率空間・保測作用・保測同値関係などの基本的なアイデアから始め、従順群・自由群・樹化可能な保測同値関係・カズダン性などといったトピックを詳しく解説する。"
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