「子ども家庭福祉」は保育士を目指す人にとって、大変重要な科目です。保育士が働く場は、保育所や児童養護施設などの社会的養護関連施設、障害児を対象とした各施設や事業、子育て支援を行う各事業など、その多くが児童福祉法に規定されています。保育士資格の取得後にどのような職場で働くかをイメージする上で、この科目の学びは欠かせません。また、こうした子ども家庭福祉の現場で働くために、子どもたちを取り巻く状況や、どのような福祉サービスがあるのかを知ることも重要です。保育士として、目の前にいる子どもたちがどのような課題を抱えているのか、どのように支援すべきなのかを考える上で必要だからです。子ども家庭福祉は、こうした事柄について学ぶ科目なのです。
近年、子ども家庭福祉を取り巻く状況は大きく変化しています。2023年4月からこども家庭庁が設置されたことに象徴されるように、子ども一人ひとりの権利擁護を掲げて、国として取り組みを強化していこうとする点は、大いに評価できると考えています。同時に国がここまでの体制を構築して支援しなければならないほど、子どもを取り巻く状況は良くないとも言えます。
2000年に児童虐待の防止等に関する法律が制定されて以降、国は子育てに介入できる体制を積極的に構築しています。家庭における子育ての機能の低下、地域社会のつながりの希薄化、就労形態の変化など、さまざまな要因が虐待のリスクになり、それを改善していけるだけの力が家庭に十分にないことが、子育てを家庭だけに任せるわけにはいかない背景となっています。また外国にルーツのある子どもたちの増加は、外国籍の人々の生活問題や子どもの文化的背景を尊重するなど、支援の対象として十分に捉えられてこなかった課題を改めて提示しています。さらにヤングケアラーについても、これまで隠れていた課題が表面化したものと捉えることができます。
少子化については国の将来の税収に直結する課題で、すでに労働力不足という形で社会問題となっています。他の先進国でも見られるように経済が発達し、都市化した社会において少子化は必然と言えますが、これ以上悪化させないためには子育てしやすい環境の構築や、子育てに意義を感じられる社会の構築が必要と考えられます。そのためには事後対応的な支援だけでなく、親の就労環境の改善や経済的支援が必須です。こうした子どもを取り巻く課題を適切に捉え、子どもの権利を守るために「子ども家庭福祉」の学びが必要となるのです。
本書では、初めて学ぶ人たちにもわかりやすい文章で、最新の情報と現状、施策の動向などについて、ポイントを押さえた内容で解説。子ども家庭福祉分野で研究、実践を重ね、各専門分野で活躍されている先生方が、担当執筆されています。また各章に設けた調べ学習「ワーク 調べて書いてみよう!」は、自分で調べて記入することで学びの理解を深め、自ら進んで学習に取り組む姿勢を養います。本書がみなさんの専門性を高め、将来に役立つよう願っています。(「はじめに」より)
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