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ユネスコの世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」には、九州北西部の島々が多数含まれている。これらの島々には長い間、「二つのキリスト教」が存在してきた。その島の一つが、長い歴史の中で世界と直接繋がり、日本史の表舞台にもたびたび登場してきた長崎県の平戸島である。
平戸島とその周辺地域には、在来の神道や仏教の諸宗派はもちろんのこと、かつての潜伏キリシタン、カトリック教会、修験道の山伏、琵琶法師の一流派、新興宗教系のシャーマンなど、実に魅力的で多種多様な宗教的要素が今日まで複雑に同居してきた。
本書では、この平戸地域の内外を俯瞰しながら、他方では個々の集落や人々にも着目し、一見すると極めて混沌とした、時に驚嘆せざるを得ないような宗教の在り方を地理学の立場から照らし出す。さらに、日本宗教の濃密な縮図とも言うべき平戸地域において、歴史の中で積み重なり、混じり合い、棲み分けてきた多彩な宗教の姿を、現在の集落と人々の営みから学ぶことを通じて、生活者の次元における日本宗教一般の理解を目指す。
本書は、著者の10年以上にわたるフィールドワークに基づくものであり、平戸城下町の成り立ちや海域世界における島嶼性など、様々な方面における示唆を含んでいる。
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