取り寄せ不可
「うつ病=セロトニン不足」「統合失調症=ドーパミン過剰」このような単純な図式は真実であろうか。本書の結論から言えば,「脳科学」「神経科学」だけで精神疾患を捉えることは,事実上不可能である。脳はあまりにも複雑であり,精神疾患を要素還元主義で説明し尽くすことはできない。それでは,精神疾患を脳科学で捉えることが無意味かというと,そんなことはない。近年の脳科学や神経科学には長足の進歩があり,精神疾患についてもずいぶんと「部分的」に明らかになっている。「部分的」ではあっても,精神疾患の本質を捉えるヒントや新しい診断法や治療法に結びつく知見が次々に見つかっている。本書では,代表的な精神疾患である統合失調症と気分障害をとりあげ,統合失調症には,その認知機能から広範にわたる非特異的な高次脳機能障害があると捉え,その遺伝的そして環境的要因を述べる。また,「金閣寺炎上僧」を通じて,その発病過程に迫る。気分障害では単極性うつ病を中心に,その病因において重要な役割を果たす環境要因,とくに「ストレス」の脳科学的側面を解説する。ストレスに対する人体の反応から,うつ病はそのホルモン異常であるとし,その病的過程・治癒過程のモデルを提示する。近年では,予防・再発防止にクライエントの生活習慣への介入が重視されている。そこで生活のなかでもとくに食事に焦点をあて,「精神栄養学」と呼べる知見からの介入を紹介する。医学・脳科学“非”専門家のための全12回脳科学講義。
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