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ノーベル平和賞候補者が綴る初の活動軌跡
48歳で小児歯科の開業医を辞して、世界最貧国といわれる西アフリカのマリ共和国へ単身渡航、30余年にわたる破天荒なボランティア人生へと転身を遂げた、ノーベル平和賞2020年候補者・村上一枝氏初の著書。
それまでの生き方を変えてゼロからの出発をし、特定非営利活動法人(現在は任意団体)カラ=西アフリカ農村自立協力会を立ち上げてからは、マリの農村地域の人々と多岐にわたる自立支援活動を行う。それは、自分が学んできたことや得てきたことものを、活動を通して少しずつ返していき、ゼロになって人生を終える道を選ぶことでもあるという。
実際、村民の識字率と就学率を上げる教育の普及、助産師の育成と助産院・診療所の設立、女性の生活改善、所得の向上をほぼ同時進行で実施し、運営管理は地域住民に任せるという画期的な活動により、「支援に頼らないで自立した生活」を構築。マリの未来に光を当て女性の地位向上につなげた。
著者は常に本質を伝え、約束を守り、マリの人々の信頼を得ていった。「視野が広い発想と行動力」「人を巻き込む指導力」「成果につなげる忍耐力」で向き合う経験の数々は、読者の人生観を心地よく刺激することだろう。
【編集担当からのおすすめ情報】
マリ共和国と聞いて、世界地図のどこに位置する国かすぐにわかる人は多くはないだろう。私自身もそのひとりでした。サハラ砂漠が国土の7割を占め、西アフリカの内陸で四方を7か国に囲まれるマリは、近年イスラム過激派組織によるテロや襲撃が多発し、2022年から首都バマコ以外の全土において日本外務省から危険レベル4の退避勧告を要請されています。旅行の人気エリア、世界遺産のバンディアガラの断崖や伝説が息づく地域トンブクトゥへ行くこともかないません。
30年にわたりマリの農村地域で村民と共に暮らし、健康に生きるための生活向上自立支援に尽力してきた村上一枝さんは、現地に入って活動することが難しい状況に陥り、心配が絶えない日々を送っています。東京から活動地域の村へ後方支援を続ける中、2023年春にようやく始まった助産所設置の建設現場を武装集団が襲撃、左官や作業員を殺害するという悲劇も起きています。初めて事業がストップしてしまうほどの事態を案じ、83歳の村上さんは本書の刊行前にマリ渡航を画策していましたが、断念に至っています。
「現地のスタッフと連絡を取ることさえ難しく、また、マリの現状を伝えるニュースが日本ではほとんど得られません。この本を通して、マリの農村に暮らす人たちの日常生活と明るくたくましい姿や長けた能力、真摯な行動力に触れ、アフリカがちょっと遠いお隣さんという意識になってもらえれば非常に嬉しい限りです。私は彼らに大きな期待を持っています」と村上さんは語る。
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