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社会において「読書」の意味と機能とは何か
明治から昭和戦前まで「読書」は、人々の知の伝達にどのような影響をもたらしたのか。また、読まないが知っているという「潜在的読書」の存在をどう理解するべきか。それは「書物-読む」という特権的な関係性を解除することで可能となる。書物をめぐる様々な行為と、これまで周縁化されてきた読書装置との関係を分析し、書物と人々の歴史に新たな視座を与える力作。
しばしば、ピケティの『21世紀の資本』は、マルクスの『資本論』になぞらえられた。その書名の対応関係だけでなく、二つの書物が資本主義における経済的な格差を取り扱っている点において、結び付られた。しかし、本研究においては、むしろ、『21世紀の資本』と『資本論』の関係は、読む/読まないの間に存在する、読んでいないが知っている、という関係において重要なのである。『21世紀の資本』においても、『資本論』においても、その社会的な影響力は、実際に読んだ人や発行された部数を遥かに超える範囲にまで波及した。こうした点こそが、書物と私たちの日常的な関係を、深く反映していると考えるからである。(「序章」より)
◎目次
序章 問題の所在と本研究の方法
第一部 読書装置の黎明
第一章 明治民権運動における声と活字と書籍館――集会条例による政治/学術の区分の発生とその間
第二章 明治後期の巡回文庫と地域組織――図書閲覧所から巡回文庫へ
第二部 読書装置の普及
第三章 大正期における文庫の遍在――蔵書の多様化する形態と施設
第四章 大正期における図書館の爆発的増加――簡易図書館と小学校と地域組織
第三部 蔵書なき読書装置の普及
第五章 大正期におけるパンフレット出版と社会主義知識の大衆的浸透――社会運動における学習会・研究会
第六章 昭和初期の社会運動と読書会・研究会
第七章 戦時下の読書運動と読書会
終 章 読書装置と書物をめぐる実践の構図
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