膠原病肺 呼吸器内科とリウマチ膠原病内科、見えている景色はどう違うか?
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「膠原病肺」の定義は何か? 様々な膠原病に合併する肺疾患でそれぞれの膠原病に固有のもの、という定義が一般的だろうか。「膠原病」は多くの疾患を含む疾患群で、肺病変を合併しやすい疾患とそうではない疾患があり、日常的に目にする膠原病肺の種類は限られる。膠原病肺が疾患群であり、単一の疾患単位を示す言葉ではないことは自明である。それでも、多くの成書で「膠原病肺」という項目は、過敏性肺炎などの疾患と同列に並んでいる。英文のreview論文でもinterstitial lung diseases in connective tissue diseasesなどと膠原病肺を包括的に扱うものが存在する。例えばリウマチ肺は「関節リウマチに合併する肺病変」を指し、関節リウマチと異なる疾患を指すわけではない。包括的理解が必要である。
呼吸器内科医の目の前に現れるのは、呼吸困難などの自覚症状があるか、胸部画像診断で病変を認める膠原病の患者である一方、膠原病と診断される患者のすべてに肺病変があるわけではない。一般に呼吸器内科医は肺病変の診断治療に注力するが、膠原病全体を捉えることが苦手である。一方、リウマチ膠原病内科医は疾患全体の病勢コントロールや様々な合併症治療の専門家であり、肺病変に興味をもっている方もいるが少数で、一般的に肺病変の治療に苦手意識がある方が多いのではないか。膠原病のコントロールがうまくいかないと患者のQOLは悪くなり、肺以外の臓器障害を招くかもしれない。肺疾患のコントロールが不良であると致命的な状態になる可能性がある。現在、互いの得意分野が診療科連携という形で活かされる体制が求められている。
多くの膠原病で肺病変は予後規定因子であるが、膠原病肺=治療はステロイドのみ、という時代が長く続いた。現在、個々の膠原病の治療薬は飛躍的に進歩したが、膠原病肺をどのように治療するか、重要なトピックになっている。日本呼吸器学会と日本リウマチ学会により合同で「膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針2020」(メディカルレビュー社)が出版された。呼吸器内科医とリウマチ膠原病内科医が診ている患者像――見えている景色――が異なるのではないかという声を耳にする。本企画では、同じ疾患を呼吸器内科医とリウマチ膠原病内科医の双方に執筆いただくことで、「見えている景色の違い」を理解できるのではないかと考えた。呼吸器内科医には主に肺の画像診断と肺病変の治療戦略を、リウマチ膠原病内科医には膠原病の診断と包括的な治療戦略における肺病変の位置づけを解説いただいたことで、お互いの違いを理解できると考える。進行性慢性間質性肺炎(PF-ILD)/IPAF、慢性間質性肺炎の急性増悪、肺高血圧症は疾患横断的な理解が必要なので、別途総論的に解説いただいた。
診療科連携の重要性が取り沙汰されるようになり、双方の内科医が病気を一体のものと捉え、一人の患者を包括的に治療できるように、直接議論する場が増えることを願っている。この本がその橋渡し的な1冊になれば幸いである。
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