1~2日で出荷、新刊の場合、発売日以降のお届けになります
日本の中国古典研究は漢学や清の考証学などの伝統を受け継ぎ、世界的にも高い水準に達しているだけでなく、中国近代研究も時代の問題意識を強く反映した思想的に意義ある研究を生み出してきた。「中国近代小説が如何に成立したか」という問題は近代文学研究の最も関心が高いテーマの一つであり、厚い蓄積がある。戦後日本知識人の深い反省のもと、竹内好は、魯迅の分析を通して中国の近代形成過程を「下からの近代化」と称した。これは日本の政府主導で行われた「上からの近代化」と対比として、梁啓超、魯迅等の民間知識人が様々な分野での近代化を主導した事を指摘した言葉である。そのため日本の中国近代小説研究は、近代小説の創成に関わった知識人の思想に着目し、知識人の近代精神の獲得過程に則って文学史を描出する研究が主流を成してきた。代表的研究として、1944年の竹内好『魯迅』、1965年の丸山昇『魯迅』等がある。
しかし、海外ではこれらの研究はほとんど知られていない。竹内好の『魯迅』さえも翻訳されておらず、日本の研究者が行った研究はまだ海外では十分に知られていないのが現状である。本書の刊行目的は、日本の中国近代研究の実証的かつ精密な研究蓄積の上に行った研究を英語で刊行し、欧米等の文学研究との対話を促す契機となることを目指すものである。本書は日本の近代中国文学研究の問題意識「中国近代小説が如何に成立したか」を基盤とし、主に清末・明治の思想交流などの影響関係から、中国独自の近代小説形成の脈絡を実証的かつ精密な考察で示すものである。
よく利用するジャンルを設定できます。
「+」ボタンからジャンル(検索条件)を絞って検索してください。
表示の並び替えができます。