劇作をし、演出をし、俳優教育もし、小説も書く、
劇作家・福田善之を丸ごと捉えられる最初の本にしよう〓〓。
福田善之は東京下町の〈株取引〉の場、日本橋という日本経済の中心地で生まれ育った(1931年)。国の金が動く場所で一儲けしようと集まる人々や大衆文化・芸能に触れて子供時代を過ごした。つまり圧倒的に量の多い階層の人々〈PEOPLE〉─〈大衆〉が周りに居たのだ。そして多感な時代の始まりに、麻布中学という明治半ばに創設された「自由闊達・自主自立の校風」を持つ私立中学に入学する。ここで福田は大衆文化・芸能とはいささか異なる〈知性〉豊富な文化に触れる。読書と創作─夏目漱石の小説と〈芝居・演劇〉である。東大に入り哲学・思想を裡に取り込む。こうした生きる場の成長の歴史が、福田の劇世界を形成していくことになった。
多くの戯曲の中から数作を選択したが、その中心となる鍵は、福田が演劇世界で目指した構成の〈新しさ〉登場の必然であった。同時にそこに内包された〈自由と変革の思想〉にも目を向けた。この理解の下に第一部の福田善之論を進め、戯曲を分析した。(あとがき抜粋)
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