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「だいこん屋」はまさに、私の青春そのものだった。――逢坂剛
捕鯨船の船長は、「酒力」と「酒場術」を恃みに陸にあがった。
阿佐ヶ谷に五十年つづく名酒場・だいこん屋主人による、酒と俳句の日々。
拙稿の花暦の種は、阿佐ヶ谷を中心とした細道の迷路を、何年も徘徊して拾ったものです。はじめは車の通らない裏道を択って歩いていたのが、次第に更に細い道、知らない道と択ぶようになった結果なのです。 われわれ酒場稼業の者で、自身も酒好きな人間は、目覚めた時はまだ前日の酒が残っていて、すぐ食事を取る気にはなれません。ところが一時間ばかり速足で歩くと食欲も湧いてきます。道筋に咲く木や草の花に接することで、俳句を拾うチャンスに恵まれる利がありますし、一度覚えた木々の開花を、毎年訪れてみる楽しみもあります。
(「まえがき」より)
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