世界の一元化と天文学の改革
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アリストテレス・パラダイムの正否を数値的に検証するという決定的な問題を提供したのは、16世紀の彗星・新星の観測であった。この世紀に醸成された、自然研究の実証的方法にたいする新たな信頼と、高められた観測精度を足場に、ティコ・ブラーエやメストリンをはじめとする傑出した天文学者たちがドグマを次々に排してゆく。ティコの体系、ジョルダノ・ブルーノの無限宇宙など、宇宙像の刷新もダイナミックに模索される。そして、理論・技能・認識のすべてにわたる変革はついに、ケプラーの天体力学に結実する。
ケプラーが自身の理論を打ち立てた思考過程と、それと不可分でありかつ現代の科学者のものとは根本から異なるケプラーの哲学・科学思想のニュアンスを精緻に読み解く最終章は、圧巻と言うほかはない。
もっとも、ケプラーに限らない。史料原典・研究文献をはば広く読み込み、全3巻を通して浮沈する有名・無名の人物それぞれの構想と創意を丹念に跡づけ、読者にその思索の軌跡をいきいきと追体験させる手腕は、著者の真骨頂と言える。歴史研究の興味に心躍らせながら本書を読み終えたとき、前二著と合わせた〈三部作〉が提示する一個の史観が凛然と浮かび上がる。
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