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沼上幹教授(一橋大学名誉教授)が提唱した〈行為システム〉ならびに〈行為連鎖システム〉の概念を中核として、気鋭の研究者らがそれぞれの研究領域において、議論を展開する。
〈行為システム〉を中軸とする研究方法論は、2000 年、小社刊行の『行為の経営学』をはじめとする諸研究において探究されてきた。その根底にあるのは、大量のサンプルを定量的に分析する仮説検証型の研究方法のみが適切な経験的研究だという〈変数システム〉中心主義に対する疑問である。これに対し沼上教授が提起したのは、個人の主体性を重視し人間の自然な営みが組み込まれた人間観・社会観を基礎として、行為主体による意思をもった行為と複数の主体間の相互依存関係・複合的影響による結果の連鎖の考察を中核要素とする考え方、すなわち〈行為システム〉に基づくマネジメント研究の方法論である。
本書では、この〈行為システム〉を中軸に据えた研究方法論に関する議論や、そのような方法論に基づく定性的研究を取り上げると同時に、〈行為システム〉の考え方に基づいて積極的な意味づけを与えた上で推測統計の手法を用いた定量分析も展開される。現代の経営学研究において主流をなしていた研究方法論を批判的に検討しつつも、全面的に対峙するのではなく優れた要素は取り入れながら、より豊かな知見を獲得しようとするのが、本書の立場である。
今後の発展可能性を多分に有するこの概念、方法論は、本書での多面的な議論をベースとして、より精緻に展開され、洗練された見解や示唆を引き出していくはずである。経営学研究の新たな可能性を示す研究書である。
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