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≪保守本流≫英文学者による文學文化論集。
著者はトマス・カーライルの研究者。カーライルの言はんとする「理知は良きものではあるけれどもそれだけではこの世の総ては片づかぬ……〈知〉の適用對象を誤るな」といふ事を基軸に、これまで書いてきた論攷をまとめる。ベンタム流の功利主義的な時代思潮に染まり、世は詰るところ損得勘定で動いてゐるに過ぎぬのではないか、神の恩寵などありはしないのではないかと疑はずにはゐられないカーライル。つひに信仰を失ふが、絶對を探求する精神は衰へるどころか益々研ぎ澄まされてゆく。そしてここに、ヨーロッパ「精神」の激しさの源泉を見出すのである。
[コンテンツ]
【①概説】「?對者を戴く文化、戴かぬ文化―諭吉、カーライル、獨?他」
「〝洋魂〟の素晴しさ恐しさ―クリスト敎を拔きにして歐米主導の國際政治は語れぬ」
「信仰、義務、仕事―英文學に於ける世俗化」
「ファウスト的自我の運命―マーロウ、ゲーテ、バイロン」
「ヘンリー・ジェイムズの『デイズィ・ミラー』―アメリカ外交の參考書として讀む」
【②カーライル論】「カーライル『衣服哲學』試論」
「トマス・カーライルとハーマン・メルヴィル」「カーライルのフランス革命論」
「エンゲルスのカーライル論」
「機械論的世界觀との對決―トマス・カーライルと《時代の徴候》」
「カーライルのマホメット論を讀むサイード―『オリエンタリズム』への註釋を兼ねて」
【③エリオット論】「T・S・エリオットとジョウゼフ・コンラッド―『闇の奧』を巡つて」
「個性の滅卻―T・S・エリオット論」
「習慣、傳統、正統―T・S・エリオットと小林秀雄」
「異端糺明のための小問題集―T・S・エリオット『異神を追ひて』の「補遺」について」
【④讀書案?】「ソポクレス『オイディプス王』」「ジャン・パウル『ジーベンケース』」
「近松門左衞門『曾根崎心中』」「芥川龍之介「神神の微笑」」
「ジョージ・スタイナー『サン・クリストバルへのA・Hの移送』」
「ヘシオドス『仕事と日々』」「中江兆民『三醉人經綸問答』」
「ヘンリック・イプセン『民衆の敵』」「ドゥニ・ディドロ『ラモーの甥』」
「小林多喜二「蟹工船」」「タアッバタ・シャッラン「復讐の詩」」
「ウィリアム・ブレイク「毒の木」」「三世竝木五甁『勸進帳』」
「アンブロウズ・ビアス「自動チェス人形」」
「ジョウゼフ・コンラッド「進?の前哨基地」」「ジョージ・オーウェル『一九八四年』」
【⑤學恩の系譜】「福田恆存『私の國語敎室』」
「福田恆存の國語論と保守派知識人―先づ隗より始めよ」
「類ひ稀なる戰爭論『戰爭は無くならない』―『松原正全集』第三卷刊行に寄せて」
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