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〔文明を支える原初性〕シリーズ第6弾。
「人類は、衣食住や医職自由の獲得を目指して大地を駆け回り、大地を掘り返してきた。辛く苦しい環境ほど人類を賢く育てあげた。その成果は身体知となって文化的に遺伝して今日に至っている。私が研究上で座右の銘にしている「文明を支える原初性」は、人類のそのような歩みの通奏低音をなしている。
カール・マルクスが『資本論』第1部第7編第24章に書いた一文、「大きな財産がきのこのように一日でできあがり、本源的蓄積は一シリングの前貸しも必要としないで進行した」の箇所は、実に含蓄がある。その情景には、謹厳実直な職人よりも損得勘定にたけた貿易商人の姿が浮かんでくる。辛く苦しい環境は人類をずる賢く育てもする。その歩んできた歴史については、科学的思考で杓子定規に組み立てないほうがいい。エゴイズムは、自分の道を切り拓く意味では尊い思想だが、他人の道を横取りしたりする意味では狡猾な思想である。けれども、尊いか狡猾か、それは当事者が存在する諸関係、アンサンブルの中で決まる。
本書に収められている諸論文は、概ねそうした当事者関係性を下地にして書かれている。」(はしがきより)
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