【本書の特徴】
本書は,不整地移動機構や制御に関する不整地移動ロボットについて,体系的に解説するテキストです.対象読者層は,この分野の専門的な知識を習得しようとする学生,研究者,および企業の技術者を想定しています.
不整地移動ロボットの研究は,ロボット研究の黎明期から継続的に進められてきましたが,これを体系的にまとめたテキストはこれまでありませんでした.そこで,編著者と現在不整地移動ロボット研究の最先端を切り拓いている若手研究者7人が,不整地移動ロボット(車輪型,クローラ型,脚型,ヘビ型)のハードウエア,運動制御,動作計画などを体系的にまとめました.本書には,著者達の『自分が駆け出しの頃,こんな本があれば良かったのに』という思いが込められています.
【各章について】
0章では,本書の序論として,不整地の定義について紹介します.本書のタイトルにも入っている「不整地」という言葉は,耳にしたことも多いと思います.よくある国語辞典の定義では「整地されてない地形」とありますが,それが意味するところは多様です.そこで,本書では,ロボットの作業環境とその規模を関連付けながら不整地の幾何学形状や表面構成要素について分析し,「不整地」の定義づけを行いました.これは,非常にチャレンジングな試みであるため,今後異論も出てくるはずです.この不整地の定義に関する議論を,これからも継続していければと考えています.
1章は,車輪型/クローラ型ロボットです.車輪型とクローラ型,格好だけ見ると,ずいぶん外見は異なりますが,両者とも,無限回転運動を通じて移動を実現するため,運動制御における共通点が多いです.そこで,この章では,車輪型とクローラ型の基本的な共通点と相違点,両者が凹凸不整地を走行するためのメカニズムについて紹介しています.また後半では,車輪型とクローラ型を比較しながら,軟弱地盤走行に関する話題(テラメカニクス)や不整地走行制御など,最新の研究成果について体系的に説明しています.
2章は,脚型ロボットです.脚型移動は,高い環境適応性を持つ移動方法として広く研究されています.この章では,脚型ロボットのハードウエア,メカニズム,運動計画,制御手法といった脚型移動機構の基本について紹介すると共に,脚型ロボット制御の最新の動向にも触れています.
3章は,ヘビ型ロボットです.ヘビ型ロボットには,本物のヘビのように身体をくねらせて前進するものから,多くの駆動輪を備えたものまで様々な種類がありますが,それぞれのメカニズムや制御手法について体系的に説明しています.後半では,不整地環境でのヘビ型ロボットの移動時に発生する可能性のある問題や,それらの問題の解決策について考察しており,大変興味深い内容となっています.
なお,各章や節の終わりには,コラムとして,ロボット開発で直面する様々な問題やちょっとしたヒントになるトピックが紹介されており,これらも必見です.
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