現代の保育・教育にまつわる諸問題を多角的に捉えて解説する「現代保育内容研究シリーズ」の第7弾。
本書には、現代の日本の保育に必要な知識や意識の一端が含まれている。第1章は、子どもの権利条約や令和5年に施行されたこども基本法に触れながら、子どもの権利に関しての解説がなされている。最近は保育者による子どもに対する虐待がニュースでたびたび取り上げられている。保護者の意識の変化やSNSの発達などにより、これまで問題とならなかった保育者の言動が表に出てくるようになったことも一因であろう。この問題を、単に保育士(者)不足に原因を求めるべきではなく、保育者の倫理意識の甘さやゆがみが根底にあるのだと考えるべきではないだろうか。その意味でも、第1章は子どもの権利について正しく学ぶ機会を提供できるだろう。第2章は、絵本という教材の意義について考える機会を与えている。文部科学省が取り組んでいる幼児期から小学校へのスムーズな移行のための架け橋期プログラムについて、言葉という視点から検討を加える内容となっている。第3章は、子どもの心地よさに着目をしている。長時間を保育施設で過ごす子どもが増えている現状を考える時、子どもがそこで心地よく過ごすことは重要な問題である。心地よさとはなんであるか、人間関係や感覚、環境などの広い視点から述べられている。第4章は0歳~3歳未満の子どもと保育者が絵本を通してどのようにかかわるか、といった内容について、保育所保育指針を基に解説を試みる内容である。0歳~3歳未満は言葉が発現し急激に使える言葉が増えていく時期である。そのため保育者のかかわりによってより良い発達を促す必要があるわけだが、その一助としての絵本の活用についてあらためて考えることができるだろう。第5章は子どもの音楽的発達について解説を加えつつ、子どもの音楽的表現の発達を保育者がどのように援助していくか、といった問題について触れている。保育現場では現在も保育者がピアノを弾いたり歌を歌ったりする場面が多くある。子どもが思わず歌いだしたくなるような環境を創出するためにはどうしたらよいか、様々な視点から丁寧に述べられている。
このように本書は、保育者養成校のカリキュラムに含まれる科目に対応するテキストではないものの、より高い専門性を培うためのサブテキストとしての使用に十分足りる内容となっている。また、現場保育者にとっても、保育の質を高めるための一助となる内容である。ぜひ多くの保育関係者に手に取ってもらえれば幸いである。(「まえがき」より)
よく利用するジャンルを設定できます。
「+」ボタンからジャンル(検索条件)を絞って検索してください。
表示の並び替えができます。